遠い宇宙の声 ~宇宙マイクロ波背景放射~

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物理
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宇宙の晴れ上がり

前頁に書いた「137.99±0.21億歳」を思い出して下さい。
これは様々な宇宙モデルとハッブル定数や宇宙望遠鏡の
正確な観測などで導き出された
宇宙の年齢です。
そんな宇宙誕生から10⁻⁴³秒後、これは人類が遡れる
時間の最小といわれています。(プランク時間)


高密度、超高温の火の玉宇宙は
宇宙誕生から10⁻³²秒後、宇宙が急速に加速する。

この頃の宇宙時代を実験にて研究しているのが
LHC実験などの加速器実験です。

宇宙誕生から約1秒後、まばたき1回ほどの一瞬ですねw
ニュートリノは分離し陽子、中性子が形成されました。


credit:Siloto/Alamy

インフレーションによる急膨張で火の玉宇宙といわれる
ビッグバンで急成長したとされる宇宙は
どんどん加速膨張を続け
長い長い、途轍もない時間を経て
膨張し続け138億年経った宇宙の中の「地球」に届いたものが
宇宙マイクロ波背景放射です。
誕生したばかりの宇宙は超高温、超高密度の世界です。


宇宙誕生から38万年後、膨張を続ける宇宙の温度は約3000℃まで
下がるとこの頃の宇宙に、ある変化が現れました。
超高密度の宇宙では陽子と電子がバラバラに飛び交うプラズマ状態。
光はいっぱいの粒子に当たり続け、直進できない時代があって
雲の様にモヤモヤとしていたのですが、電子が陽子に取り込まれ
中性の水素原子が誕生したことにより、直進できなかった光が
真っ直ぐ進めるようになりました。この直進し始めた光の名残りが
今、宇宙の中の、地球に届いている。という事!
その当時の光の波長が冷えて伸びて、3K=約⁻270℃程まで冷えました。
観測可能な「宇宙最古の光」の名残りが宇宙背景放射です。
※私たちに降り注ぐのは電波だけではなく、宇宙線、二次宇宙線などの原子核や素粒子など他にも沢山あります※

 

宇宙最古の光を見るには?

さて、私たちが地上から宇宙にある天体を見たり、観測するには?
目視で空を見上げて、注.太陽・月・星・太陽の光を反射して輝く惑星を
眺めたり、屈折や反射などの光学望遠鏡を使って観望する。
もしくはデジタルカメラなどを使って夜空を撮影するなどの方法がある。
でも上記の方法には限界がある。
そうです、曇りや雨になると見る事ができなくなっていまいますよね💧

applestar
applestar

※絶対に太陽を直接見ないで下さいね!網膜損傷による失明の恐れがあります。
 詳しくは、コチラをご覧ください。

photo by : starwalker(前田 徳彦氏) 「天文台と雲間の月」より画像提供。

さて!一面、雲だらけの夜空に望遠鏡を向けても普通のカメラや
望遠鏡では輝く天体は何も見えません。
しかし、電波望遠鏡なら話は変わってきます!天体からやって来る電波は
大きなパラボラアンテナで集められ、受信機で扱いやすい周波数に変換され
分光器により周波数ごとに細かく分けて調べる事ができます。
では電波以外の電磁波も観測できるのだろうか❓はい、勿論できます!
電波望遠鏡なら、波長の短いX線やγ線、波長の長い電波も観測可能です。

では、地上にある電波望遠鏡だけで、こんなに正確に宇宙誕生後
38万年まで遡って観測できたのでしょうか?
違います!地上からではなく、宇宙で望遠鏡観測した結果なのです。
地上でも観測は可能だけど、地球大気の影響も大きいので
大気のない宇宙空間から途轍もなく遠い遠いところから来る
宇宙マイクロ波背景放射=宇宙最古の光を観測したものがあります。
活躍した観測機器を幾つかご紹介します。


COBE探査機 COsmic Background Explorer
1989年11月、NASAが宇宙マイクロ波背景放射を
正しく
測定する為に打ち上げた探査機。
🛰パネルを開くと8.53m総重量は2.27t
観測功績は背景放射の絶対温度は2.735Kで
黒体放射からのズレは1/1,000以下。
COBEは背景放射の異方性(ゆらぎ)
の測定を行い
10度離れた方向からの強度差は、温度に換算して
1/10万の違いゆらぎであることを発見しました。
※COBEにはDIRBE、DMR、FIRASの3つの観測機器が搭載※

credit:Wikipedia

credit : Wikipedia

WMAPWilkinson Microwave Anisotropy Probe。
2001年7月1日、NASAが打ち上げた宇宙探査機。
ビッグバンの名残り、宇宙背景放射 (CMB) の
温度を全天にわたってサーベイ観測する任務!
1番賑わせたのが、ギネス世界記録にもなった
宇宙の年齢を始めて正確に計測した事で有名。
前機COBEで観測した「ゆらぎ」の分布マップを
地球から150万㎞離れた太陽とのL₂点で
頑張って作ってくれました。

理論物理学で唱えられてた、宇宙モデル・・・
宇宙の4%は通常の物質で、23%がダークマター
73%がダークエネルギーなどとの一致が確認。
※ラグランジュ点L₂は質量の大きい2体を結んでる線上L₁の外側※

                         

Planck ⇒物理学者マックスプランクにちなんだ
名前の宇宙望遠鏡。
2009年5月14日にESAがアリアン5でハーシェル
宇宙望遠鏡と一緒に打ち上げました🚀
Planckも前機と同様にL₂から、高解像度&高感度
で全天サーベイの観測をしました。
2015年にWMAPよりも更に正確な宇宙年齢
「137.99±0.21億歳」を発表!
遠赤外線から電波までの9つの異なる波長の
全天を調査し、遠方の初期宇宙に位置することを
示唆する特徴を持つ234もの情報源を特定
初期宇宙の星々の発見に多大な貢献をした衛星

credit : ESA / AOES Medialab

                       

              

            

上段:ESA Planck Team 下段左:JAXA、ISAS 下段右:日本物理学会より

私たちが普段、目で見えている天体は可視光で認識していて
人間の目には「見えない」ものは宇宙に山ほどあって
電磁波を使った観測だと、こんなにも違った
宇宙を見る事ができます。
1964年、宇宙背景放射を発見し80、90年代には
そのマイクロ波背景放射には「ゆらぎ」がある事を発見!
約138億歳という宇宙年齢が分かった✨
宇宙科学の進歩で、見える宇宙から⇒見えない宇宙が
最大の謎になってきました。

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